USPTO、早期審査に基づく特許第1号を付与

昨年7月のTownsend Client Alertでお知らせしたUSPTOの新しい早期審査制度に基づく初めての特許が付与されました(USP 7,188,939)。特許の対象はインクカートリッジに関するものであり、USPTOの発表によれば、通常25.4ヶ月かかる審査期間が6ヶ月に短縮されたとのことです。

従来の早期審査制度(Petition to make special)と異なり、出願時にpetitionを提出する必要があります。また、公知例調査済を理由に審査促進を申請する場合には公知例とクレームとの対比等が求められる等、手続が複雑化しています。

以下は、昨年7月のClient Alertです。
http://www.townsend.com/files/JapanPatentApp.pdf

タウンゼント知財総合事務所/ 穐場 仁

【半導体関係】Macronix、"Mirrorbit"商標訴訟でSpansionと和解

Macronix International Co Ltd.は、約1年に及ぶSpansion Inc.との係争が和解に至ったことを発表した。

Spansionは、多値フラッシュメモリチップに関する”Mirrorbit”の商標を有しており、Macronixが自社の多値フラッシュを”Mirrorbit”のセカンドソースであると偽ってビジネスをしていたとして提訴していた。Macronixは、2004年に”Mirrorbiit”のセカンドソース認定を模索していたが、認定を得られていなかった模様。

タウンゼント知財総合事務所/ 穐場 仁

ビジネスメソッドの特許性について

ビジネスメソッドクレームが米国特許法101条における”subject matter”に該当するかCAFCで議論がおこなわれています。

In re Comiskey(Fed. Cir. 2006-1286)では、どのような発明が”subject matter”に該当するか、CAFCがUSPTOと出願人の双方にsupplemental briefを提出するよう求めました。このbriefの中でUSPTOは、(1)発明の方法が特定の装置と関連している場合、(2)発明の方法がある物質を他の状態や物に変化させる場合、を”subject matter” に該当するものとして議論しています。この議論の趣旨は、ビジネスメソッドの発明は、有体物(tangible subject matter)を”transform”するもの、あるいは、無体物(intangible subject matter)であって現実の物理的世界(physical world)に関係するもの、のいずれかである必要があるというもののようです。

関連する論点については、本件を含め3件がCAFCに係属しているということで、ビジネスメソッドクレームの特許性について新たな指針が示されるかもしれません。

タウンゼント知財総合事務所/穐場 仁

【続報】Community Patent Review パイロットプログラム

いまだUSPTOからの正式発表はないですが、続報です。

本パイロットプログラムに提供された出願については、誰でもオンライン上で関連情報を掲載することが可能となるようです。情報を掲載した人の詳細情報を開示することで専門家と非専門家とを区別可能とするようで、これによって提供された情報の質の維持を目指す模様です。また、提供された情報の中から投票により審査官に提供する情報を選別するとのこと。

タウンゼント知財総合事務所/穐場 仁

Community Patent Review パイロットプログラム

USPTOは、公開特許に対してウェブ上で情報提供を可能とするパイロットプログラムを検討している模様です。一部米メディアなどでとりあげられているようですが、USPTOのホームページには詳細な情報は掲載されていないようです。

このパイロットプログラムは1年間の予定で、リソースの関係から”Tehnology Center 2100 (Computer architecture, software and Information Security)”の出願に限り、件数も一部(数十件程度?)に限られる予定とのことです。

具体的な内容は未だ不明なため、適宜フォローしたいと思います。

タウンゼント知財総合事務所/穐場 仁

【半導体関係】Intel、Amberwaveと和解

Intelは、歪シリコン基板技術に関する特許訴訟に関しAmberwave (Amberwave Systems Corp.)と和解した。この訴訟はAmberwaveが2005年7月に提起したもの。和解契約の詳細は不明であるがIntelによるライセンス料の支払いが行われる模様。対象特許はUSP5,158,907, USP7,074,655。

タウンゼント知財総合事務所/穐場

USPTOルール改正

継続出願の回数制限や審査クレーム数の制限などで特許業界を騒然とさせたUSPTOのルール改正であるが、その実現可能性についてはいまだ不確定であり、さまざまな憶測が流れている模様。

直近では、4月初旬に改定ルールを提出する可能性が極めて高い旨、USPTO高官が発言したとされている。提出を予定されている改定ルールは、1)継続出願等の制限、2)審査クレーム数の制限、の両内容を含んでいるとのこと。改定ルールはUSPTO内の審査を経た後公示され、90日程度の周知期間を経て有効となる。

以上はあくまでも現時点の噂です。

タウンゼント知財総合事務所/穐場 仁

Ex parte Lee

米国特許明細書において、”prior art”との表示の代わりに”related art” “conventional art”などを用いているものがある。公知例の自認(admission)との関係でその法律的意味合いは興味深い。

Board of Patent Appeals and Interferences(BPAI)は、Ex parte Lee事件(Appeal 2006-2328)で、「”related art”等と表記されたものは”prior art”であると推定することができる」と言及している。

本事件の決定は、BPAIを拘束する先例とはならない旨付記されている。従って、上記はあくまで参考意見であるが、今後の実務の動向が注目される。

タウンゼント知財総合事務所/穐場 仁

Hakim v. Cannon Avent Group, PLC, et al.

CAFCは、2月23日に、Hakim v. Cannon Avent Group, PLC, et al.事件に判決を下した(CAFC 2005-1398, http://fedcir.gov/opinions/05-1398.pdf)。

本事件では、親出願のクレームを継続出願で拡張する場合について興味深い説示が行われている。

本事件で争われたUSP6,321,931は”leak-resistant drinking cup”に関するものであり、クレーム中の”opening”のクレーム解釈が争点の一つになっている。’931特許は親出願(後に放棄)からの継続出願であり、親出願の審査経過では”slit”という文言を使用し特許性を主張していた模様である。継続出願では”slit”を”opening”と拡張して登録となっている。

CAFCは、地裁での判断(“opening”を実施例の”slit”に限定的に解釈)を肯定し、

「出願人は継続出願を行いクレームを拡張することができる」が、
(“Hakim had the right to refile the application and attempt to broaden the claims.”)

「放棄された権利範囲をrecaptureすることは許されない」
(“However, an applicant cannot recapture claim scope that was surrendered or disclaimed.”)

「審査過程で行われた権利範囲の放棄は取り消し可能であるが、そのためには、従前の権利範囲の放棄及びそれによって回避されteた公知例を再度検討する必要がある旨を審査官に知らしめたことが(審査経過から十分に明らかである)必要がある」
(“Although a disclaimer made during prosecution can be rescinded, permitting recapture of the disclaimed scope, the prosecution history must be sufficiently clear to inform the examiner that the previous disclaimer, and the prior art that it was made to avoid, may need to be re-visited.”)

と判事している(日本語は筆者による意訳)。

本特許の審査経過では、継続出願を行う際、「継続出願のクレームは親出願のクレームより広い」旨を審査官に伝えていたようである。しかしながら、かかる連絡だけではrecaptureを正当化できないとのCAFC判断と思われる。

本判決の評価、継続出願の実務に与える影響を注視したい。

タウンゼント知財総合事務所/穐場 仁